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前回の記事では、金銭的な困難によって私たちの脳がしっかり考えることができず、判断力がなくなってしまうメカニズムを解説しました。
では、経済的な余裕、さらに言えば経済的自由(FIRE)を達成すると、脳の中で一体何が起こるのでしょうか?
多くのFIRE達成者は「余裕ができた」「ストレスが消えた」「人生で大切なものに時間を使うようになった」と語りますが、これは単なる精神論ではないのです。
経済的安定は、脳の機能が「非常時モード」から「理性モード」へ切り替わる変化なのです。
この記事では、医師として脳科学と精神医学の視点から、経済的自由があなたの脳にもたらす具体的なメリットと、その「最高の脳」を手にいれるためにどうしたら良いかを解説します。
1. 経済的自由で脳に起こる3つの変化
経済的自由とは、「生存の脅威」という名のおもりを脳から取り除くことです。これにより、以下の3つの劇的な変化が起こります。
思考のメモリが増大する
「今月の家賃は?」「食費をどう削る?」といった目先の生存に関わる課題を処理するために使われていた脳の資源が、経済的安定によって完全に解放されます。
PCの裏側で常に重いセキュリティソフトが動いていた状態から、そのソフトをアンインストールし、メモリがすべて長期的計画や創造的な思考のために使えるようになる状態へ移行します。
仕事での複雑な問題解決能力、新しいスキル習得のスピード、趣味への集中力など、すべての知的活動のパフォーマンスが劇的に向上します。
扁桃体の鎮静化:恐怖と衝動の抑制
金銭的なストレスは、脳の警報装置である扁桃体を常に活性化させてします。
この状態が続くと、「恐怖」「不安」に基づいた衝動的な行動をとりやすくなります。
病気になった時が不安だから、医療保険に過剰に入ってしまうとか、不安を紛らわせるためにお酒をたくさん飲んでしまったり、ついつい衝動買いをしてしまったり。。

不安だから、ついやっちゃうよね。。
扁桃体が理性を支配し、このようなその場しのぎの行動をしてしまうんですね。
経済的自由は、この扁桃体を鎮静化させます。
すると、衝動買いや健康に悪い習慣を抑制しやすくなり、衝動的なミスが減ることで、資産を守り、健康を維持する能力が高まります。
投資で短期的な価格変動があっても、「生活基盤が崩れるわけではない」という認識が、冷静な判断を可能にします。

将来のことを考えられるようになったよ!
感情に振り回されることなく、長期的な視点での合理的な行動(例:ドルコスト平均法の継続)が容易になるのです。
前頭前野の機能回復:計画性と創造性の復活
前頭前野は、人間の理性、計画、未来予測、衝動の抑制を司る「司令塔」です。
強いストレスがずっと続くと、扁桃体が強くなり、前頭前野の機能が抑えられてしまいます。
経済的自由は、この前頭前野に再び主導権を取り戻すことができるのです。
そうすると、将来のビジョンや目標を持ち、それに向かって計画的かつ一貫した行動を取れるようになります。
また、新しいアイデアやビジネスチャンスに対する感受性が高まり、人生を主体的にデザインする力がつくようになるのです。
まさに、人生を謳歌できるようになるわけです。
2. 「最高の脳」を手にいれるための3つの最初の一歩
さて、どのようにしたら「生き生きとした脳」を手に入れられるのでしょうか?
最初の一歩は非常にシンプルです。
ストレスがかかった脳でも「小さな成功体験」を経験することで前頭前野を少しずつ活性化させていくと良いのです。
「ゼロタスク」の確保:固定費の自動化
脳のリソースを最も無駄遣いしているのは、毎月繰り返される「支払い」や「管理」です。
- 最初の一歩:生活費の支払いと貯蓄・投資をすべて自動化しましょう。
- 携帯料金や保険料など、毎月かかる固定費を自動引き落としに設定。クレジットカード引き落としにするのがポイントを考えるとベスト。
- 給与が振り込まれた直後に、決めた額を自動で投資口座へ振り替える(先取り貯蓄/投資)
「今月支払いは大丈夫か?」という無意識の懸念から脳を解放します。
これにより、毎日数分、年間で数時間の認知帯域が瞬時に解放されます。
さらに、残った金額でやりくりするという発想になるので、かなりのストレスが軽減するのです。
さらに、money forwardなど家計簿を自動化して作成することで、作業を減らし、脳は集まったデータを見て判断するだけで良いようにするのです。
「投資の自動化」で感情をシャットアウト
感情的な売買や衝動的な浪費は、扁桃体の仕業です。
これを防ぐには、判断の機会を強制的に無くすのが最も効果的です。
そのために、少額の積立投資(NISAつみたて投資枠など)を「自動設定」で始めるのが良いです。
そもそも、新NISAのつみたて投資枠は、人間の判断で投資するより、機械的に投資した方が成績が良いと言う理屈で制度が作られています。
これは投資の過去の成績から導かれた結果ですが、脳科学的にもとても理にかなっているのです。
そもそも株価暴落時には人間は恐怖で株を売って現金化させたい気持ちになります。
これは完全に扁桃体に支配された行動です。その場しのぎで、全く理にかなっていません。
逆張り投資と言って、暴落時に逆に買い進める猛者もいますが、これは勉強と経験で前頭前野が扁桃体を抑えられるようにならないとできません。
そこまでのやる気がない人は、自動でつみたてるのが脳科学的にも合理的なのです。
「ゴール設定」を具体化する
前頭前野の機能を回復させるには、「いつまでに、いくらで、何をする」という明確な長期目標が必要です。
- 最初の一歩:具体的なFIRE目標額と達成時期を紙に書き出し、視覚化しましょう。
- 例:「55歳までに3000万円貯め、田舎で週3日働いてゆとりのある生活を送る」
前頭前野が「実行すべき計画」を認識し、活性化します。
「何となく節約」から「目標のための行動」へと意識が変わり、続けられるようになるのです。
結論:資産形成は「脳の健康診断」である
経済的な自由を目指す旅は、単にお金を増やすことではありません。
それは、「脳」という最も重要な資源を、その場しのぎの状態から解放し、最高の機能を取り戻すことができる、最も効果的な戦略なのです。
賢い投資と消費によって脳を生き生きとさせることは、人生の質と長期的な幸福に対する、最も確実で大きな「投資」なのです。

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