最近、「フラット50」など返済期間50年の超長期住宅ローンが話題ですね。
ニュースや多くのFP(ファイナンシャルプランナー)からは、「総支払利息が莫大になる!」「80歳までローン地獄か!」といった否定的な意見が多く聞かれます。
これらの警鐘は、ほとんどの人にとって正しいです。
十分な金融資産がない状態で、ただ「月々の返済額を減らしたい」という理由だけで50年ローンを選ぶのは、将来に大きなリスクを先送りする、極めて危険な選択になりかねません。
しかし、すでに数千万円単位の金融資産を持ち、投資による複利の効果を充分に得られているなら、話は全く変わってきます。
その場合、50年ローンは「借金地獄への扉」ではなく、あなたの資産を増やす道具へと姿を変えるのです。
今日は、多くのメディアが決して語らない、金融資産を持つ層にとっての50年ローンの真実について医師が説明します。
なぜ、ほとんどの人にとって50年ローンは「悪」なのか?
まず、大前提の確認です。なぜ50年ローンが危険視されるのか?
- 莫大な総支払利息: 期間が延びる分、支払う利息の総額は35年ローンより1,000万円以上増えることも。これは、本来なら資産形成に回せたはずのお金を、ただ銀行に支払い続けることを意味します。
- 人生を縛る長期の拘束: 30歳で組めば完済は80歳。その間に起こりうる収入減、病気、介護といったリスクに対応できるのか?という深刻な問題があります。
- 資産価値下落のリスク: 特に地方や郊外では、50年後もその家の資産価値が維持されている保証はありません。ローンだけが残るなんて恐れもあります。
これらのリスクは現実であり、十分な資産や金融リテラシーがない方が安易に手を出すべきではない、というのは100%正しいです。
富裕層にとって、50年ローンが「武器」に変わる瞬間
では、なぜ資産を持つ層にとっては「朗報」なのか?
それは、彼らがローンを長期間借りることで、手元で投資できる資金を確保し、運用してより資産を増やすからです。
1. レバレッジ効果の最大化:低金利で「時間」を買う
最大のポイントは、月々の返済額を極限まで圧縮できる点です。例えば5,000万円を金利1.8%で借りる場合、
- 35年ローン:月々約16.1万円
- 50年ローン:月々約12.7万円差額は月々約3.4万円、年間約41万円です。
資産家はこの浮いた41万円をどうするか?
彼らは、住宅ローン金利(1.8%)を遥かに上回るリターンが期待できるS&P500(歴史的平均7-10%)や、より積極的なポートフォリオ(期待リターン10%超)に、即座に再投資します。
これは、銀行から超低金利でお金を借りて、より高い利回りで運用するという、究極のレバレッジ戦略です。
50年という時間は、この戦略の効果(複利)を最大化するための、最高の味方となります。
以前このような記事を書きました。
2. 機会費用の最小化:手元資金は投資に回せ!
もし手元に十分な現金があっても、彼らは繰り上げ返済などしません。
なぜなら、年利1%台の借金を返すということは、その現金を年利1%台で運用するのと同じだからです。
その現金を、年率7%以上が期待できる市場に投じておけば、差額の5%以上が、毎年あなたの利益となるのです。
低金利の借金を急いで返すことは、この美味しい果実をドブに捨てる行為に他なりません。
50年ローンは、手元資金を最大限、高リターンの市場に置いておくことを可能にします。
3. インフレは最強の味方に
50年という超長期で見れば、緩やかなインフレが続く可能性は高いです。
インフレは、借金の額面を変えませんが、その実質的な価値を目減りさせます。
一方で、株式や不動産といった資産の価値は、インフレと共に上昇する傾向があります。
長く借りれば借りるほど、インフレは資産価値を押し上げ、借金の重みを軽くしてくれる、最強の味方となるのです。
【超重要】ただし、50年ローンを有効活用できる人は限られる
ここまで読んで、「自分も50年ローンでレバレッジをかけよう!」と思った方、絶対に待ってください!
この戦略が有効なのは、以下の条件を全て満たす、ごく一部の人に限られます。
さらに返済時の年齢を考えると、30歳前後の人になるので、有効な人は本当に限られると思います。
- 十分な金融資産(最低でも数千万円レベル)を、すでに保有していること。 万が一、投資がマイナスになっても、ローン返済に窮しないだけの資産が必要です。
- 投資のリスクと複利の効果を、深く理解していること。 「r > g」の本質や、長期投資の哲学がなければ、市場の下落局面で精神的に耐えきれません。
- 安定した高いキャッシュフロー(収入)があること。 ローン返済と、追加投資を、余裕をもって継続できることが大前提です。
これらの条件を満たさない方が、安易にこの戦略を真似することは、破滅への最短ルートです。
あなたにとって、50年ローンは依然として「危険な罠」である可能性が高いのです。
もっと年齢が上の人の場合、35年ローンなどになるでしょう。
この場合も考え方は一緒になります。
まとめ:ツールは使い手を選ぶ
50年住宅ローンは、包丁と同じです。料理人が使えば素晴らしい料理を生み出しますが、知識のない子供が使えば、大怪我をします。
大多数の人々にとっては、依然として慎重に避けるべき選択肢です。
しかし、十分な資産と知識を持つ、選ばれたプレイヤーにとっては、それは資産形成を次の次元へと加速させる、強力なツールなのです。
ご自身の状況を冷静に見極め、この「諸刃の剣」と、どう向き合うべきか、慎重にご判断ください。


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