楽天の証券担保ローンが本格的に開始
一部の投資界隈で、有価証券担保ローンが広がっていると思いますが、一般的にはまだまだマイナーな世界です。
一部の富裕層を除いて、野村證券の野村webローンが金利も低くてハードルも低く、最も利用しやすい証券担保ローンです。
しかし、野村證券で直接担保となる証券を買うと手数料が高く、ネット証券から証券を移管させる必要があります。
野村證券と野村信託銀行を開設し、移管してローンを借りるまでに1ヶ月半程度かかるのが難点です。
楽天証券と楽天銀行が連携してスタートさせたこのサービスは、投資家にとって新たな資金調達の選択肢となり得ます。
手数料の安い楽天証券で証券を買って、それをそのまま担保にすることができるので非常に便利だと思います。
証券担保ローンって、具体的に何ができるの?
簡単に言えば、あなたが証券で保有している株式やETFなどを担保にして、銀行からお金を借りられるサービスです。
「え、それって信用取引とどう違うの?」と思う方もいるかもしれません。信用取引は「借りたお金で株を買う」こと自体が目的で、保証金を差し入れてレバレッジを効かせることが特徴です。
一方、証券担保ローンは、「今持っている資産を担保に、別の目的で現金を借りる」ことが可能です。
これにより、以下のようなメリットが期待できます。
- 大切な資産を売らずに済む: 長期で保有したいと思っている成長株や高配当ETFを売却することなく、急な出費に対応できます。売却益にかかる税金も繰り延べられますし、複利効果を中断せずに済みます。
- 低金利での資金調達: 不動産を担保にするローンほどではありませんが、カードローンなどに比べると、比較的低金利(年利2.00%~)で借り入れが可能です。
- スピーディーな手続き: オンラインで完結し、担保設定や融資の実行が比較的迅速に行えます。急な資金ニーズにも対応しやすいでしょう。
- 新たな投資機会の創出: これが最大のメリットです。借り入れた資金を、例えばより成長が見込める別の銘柄や、新たな投資戦略に充てることで、保有資産を担保にさらに資産を増やす「レバレッジ投資」が可能になります。
- もちろん、急な出費用の資金調達先として確保することも可能です。
なぜ今、楽天の証券担保ローンが注目されるのか?
このサービスの本格スタートで、一般投資家の資金調達の選択肢が増えたということですが、難点があります。担保対象が限定されることです。
楽天銀行 証券担保ローンの担保対象は、国内上場株式、国内ETF、国内REITとなっています。米国株や海外ETFは担保にできないのです。
例えば、S&P500指数に連動するETFとして人気のVOOやIVV(米国上場ETF)を保有していても、それらを担保にすることはできません。
しかし、同じS&P500に連動する東証上場のETF、例えばSPDR S&P500 ETF(銘柄コード: 1557)であれば、担保にできるのです!
これまで信託報酬の高さや二重課税調整の対象外であるといった理由で、VOOなどに比べてメリットの薄い1557に、「担保にできる」という独自の新メリットが出てきました。
S&P500を売却せず、その価値を最大限に活用できる道が拓かれたのです。
ちなみに1557だけでなく、MAXIS米国株式(2558)などの東証に上場しているETFにも同様のメリットがあります。
賢く使うための注意点
魅力的な証券担保ローンですが、利用にあたってはいくつかの注意点があります。
- NISA口座の銘柄は対象外: 残念ながら、NISA口座で保有している銘柄は担保にできません。課税口座で保有している銘柄が対象です。
- 担保掛目と追い証(追加担保請求): 担保評価額の最大60%まで借り入れ可能ですが、株価が大きく下落すると、担保の評価額が下がり、「追い証」と呼ばれる追加の担保差し入れや一部返済を求められることがあります。これに応じられない場合、担保としている株式が強制的に売却されてしまうリスクがあるため、余裕を持った利用が不可欠です。
- 金利変動リスク: ローン金利は変動することがあります。金利が上昇すれば、利息負担が増え、せっかくの投資リターンを圧迫する可能性があります。
- レバレッジによるリスク増大: 借り入れた資金をさらに投資に回す場合、利益が増える可能性もあれば、損失が拡大するリスクも高まります。ご自身のリスク許容度を十分に理解した上で、慎重に判断しましょう。
まとめ:眠れる資産を有効活用する新たな選択肢
楽天の証券担保ローンは、保有資産を「動かせる現金」に変える新しいツールとして、投資家の戦略に多様性をもたらします。特に、これまで利用価値が限られていた東証上場ETFにも新たなメリットが加わったことは、ポートフォリオの柔軟性を高める上で注目すべき点です。
「売りたくないけど、資金は欲しい」「もっと効率的に資産を増やしたい」と考えている方は、この証券担保ローンの活用を検討してみる価値は大いにあります。
株価暴落時のリスクを考えたい人は、私が以前の記事で紹介した、担保充足率を十分高くして利用すると、ロスカットのリスクを最小限に抑えることができますので、参考にしてください。
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