今回は、原因を1つに決めつけることの危険性について書いていきます。
この記事を読むことで
・何か嫌なことやトラブルが起きた時、根拠のないものを原因にしなくなる。
・子育てにも役に立つ。教育の考え方にも役に立つ。
数学と何が関係あるのかと思うかもしれませんが、あるのです。それを説明していきます。
カオス理論とは?
今回使う数学は、カオス理論です。そのほか、スケールフリーネットワーク、パーコレーションという現象をもとに考えます。
カオス理論は僕もよく知りませんでした。
カオス理論(カオスりろん、英: chaos theory、独: Chaosforschung、仏: théorie du chaos)とは、力学系の一部に見られる、数的誤差により予測できないとされている複雑な様子を示す現象を扱う理論である。カオス力学ともいう[1][2]。
ここで言う予測できないとは、決してランダムということではない。その振る舞いは決定論的法則に従うものの、積分法による解が得られないため、その未来(および過去)の振る舞いを知るには数値解析を用いざるを得ない。しかし、初期値鋭敏性ゆえに、ある時点における無限の精度の情報が必要であるうえ、(コンピューターでは無限桁を扱えないため必然的に発生する)数値解析の過程での誤差によっても、得られる値と真の値とのずれが増幅される。そのため予測が事実上不可能という意味である。
引用:wikipedia
これだけ聞くとよくわからないですよね。。。
これは簡単にいうと、初めに設定した値がほんのわずかでもずれた場合、結果はとても大きな差になるということです。
例えば、天気予報で明日の天気を予想することはかなりの精度でできるようになりましたが、1年後の天気を正確に予想するのは困難です。コンピューターに変数を入れて計算するのですが、1年後だと実際の結果に大きな差が生じてしまいます。
変数の数値がほんの少し変わるだけで、結果が大きく変わってしまうので、予測ができなくなってしまうのです。
医学で言えば、例えば大腸癌が肺転移することが知られていますが、肺のどこに転移するのかは予測不可能ってことになります。
大腸癌肺転移の論文をきちんと読んでいませんので、もしかしたら肺のどこに転移しやすいのかを調べた報告はあるかもしれません。しかし、あったとしてもほんの少し条件(例えば血圧、脈拍、体温など、変数はいくらでもあります)を変えると結果が大きく変わるのには違いなく、計算で予測するのはかなり困難でしょう。
どうなるか予測もできないし、結果からなぜそうなったのかたどることもできないのです。
原因論の落とし穴
前回塩素が肌に与える影響についての記事を書きました。
この記事を書いたきっかけは、妻がお風呂に入った後に全身赤くなってかゆくなることでした。
何が原因だろうと思い調べていくと、水道水の残留塩素が原因ではないか?と気づいたのです。ビタミンCが塩素を中和することがわかり、まず家にあるレモン汁を入れてみました。するとお風呂後の赤みが改善したのです。
これで良くなるなあと思ったのですが、ある日妻がまた肌を赤くさせていました。聞くと、今日ストレスのかかる出来事があり、お風呂に入る前に肌が赤くなった。それでストレスが肌荒れの原因と考えビタミンCを入れずに入浴したとのことでした。
私はストレスも原因としてあるかもしれないが、お風呂の前に赤くなったのは肌に残留した塩素の可能性もあるし、ビタミンC入れるのをやめてはいけないと怒りました。
この時、ハッとしたのです。人はみんなとりあえずでいいから原因を決めたがるんだなあと。しかも1つに決めたがる!
今回の肌荒れの原因はストレスもあるかもしれないが、塩素など、複数の原因が絡んでいる可能性があるのになあと思ったのです。
これは歴史を見てもよくあることです。例えばナチスドイツがユダヤ人を迫害した悲劇の歴史がありますが、ナチスドイツを誕生させた原因の一つは世界恐慌です。みんなが生活に困っている所にヒトラーが現れて、仕事を与え、ユダヤ人を敵と見なしたのです。実際はそんな単純ではなく、複雑な原因があるというのにです。
ところが、京都大学の酒井先生の本を読んで衝撃を受けました。カオスの世界では、複雑な原因どころか原因をたどることすらできないとわかったのです。
スケールフリーネットワーク、パーコレーションとは?
スケールフリーネットワークとは、不平等な複雑ネットワークです。
と言ってもよくわからないと思いますが、例えば人の交友関係とか、人間の脳の神経ネットワークなど、意思決定のないネットワークのことです。会社の組織図は指揮命令系統があるので、意思決定があります。
自然界の各生物の関係はこのスケールフリーネットワークになっています。
そして「不平等」というのが特徴です。例えば、人の交友関係をグラフにすると、ある少数の人だけの交友関係が活発で、その他の大多数の人は友達の数が少ない、という結果になるようです。
結論として、世の中は不平等ということですね。
パーコレーションとは、独立したものが多数集まり出したときに、ある密度を超えると急激につながりだす、ということです。
根拠のないことを原因にしなくなる
さて、カオス理論やスケールフリーネットワークを理解すると、何かあったときに根拠のないものに原因を求めるのを防ぐことができます。
例えば、「仕事で嫌なことがあってイライラしている、しかし家に帰ると子供が部屋を散らかしていてイライラ。。なんで子供は私の気持ちを理解してくれないんだろう。嫌がらせかしら。」みたいなケースです。
まず仕事と子供が部屋を散らかしていることに関係は全くありません。そして後の項でも説明しますが、子供は大人よりも野生に近いので、カオス的、スケールフリー的に行動します。ですから、片付けることが訓練されない限り、散らかすのが基本なのです。
もちろん、「だから納得、スッキリ!」とはなかなかいかないでしょうが、後で冷静になったときにより納得しやすくなり、気持ちも楽になるのではないでしょうか。
人のことにすることも減ると思います。結果、人間関係も良くなります。
子育てにも役に立つ。教育の考え方にも役に立つ。
これらの理論は子育てにも役に立ちます。
自然界がカオス的、スケールフリーネットワークで互いに関係しあっているということは、子供も小さい時ほどこの要素が強い状態でいるということです。
ですから、色々なものに手を出す、話があっちこっちに飛ぶ、というのも特に意味もなく行っているので、ごく自然な現象なのです。
また、こんなのに意味があるのか?というような無駄なことを子供はしますが、パーコレーションの考えに基けば、無駄と思えることをどんどんやっていって臨界点に達すると急につながりだし、意味を持つようになるのです。ですから、明らかに危険なこと、他人に迷惑をかけることでなければ、無駄なこともどんどんやってもらっていいわけです。
小さい時からあまりにしつけが厳しかったり、勉強を強制させたりする状態は前述の本で言う「選択と集中」に当てはまります。
これは変化にとても弱い状態です。時代が変わったときに通用しなくなります。スケールフリーネットワークの方が変化に強いのです。
ですから、無駄だと思えることを許容しつつ、人間として必要な基礎は身につけてもらう、と言ういいバランスが最適なのでしょう。
この記事も子育てについて書いてあります。
まとめ
・カオス理論とは?
・原因論の落とし穴
・スケールフリーネットワーク、パーコレーションとは?
・根拠のないことを原因にしなくなる
・子育てにも役に立つ。教育の考え方にも役に立つ。
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