外科の縫合 物理・数学1

勉強

今回は外科の基本的な手技である縫合、糸結びを、物理、数学と組み合わせて考えると非常にイメージしやすいという話です。

外科の結紮、器械結びは力学、円運動を組み合わせると非常にイメージしやすいです。

器械結び

針はスキー針など特殊なものを除いて弧(円の一部)の形をしています。

ですから、針を皮膚などの組織に入れて回す時に円運動をイメージすると良いです。

                   

実際やってみると、針が折れてしまうことがおります。これは針の半径よりも小さい円になってしまっているからです。このとき針はくの字に折れてしまいます。

こうならないためには、針の刺入点で円運動の接線方向のベクトルより内側に行かないように注意して針を回す必要があります。外側に行く分には針はしなって返ってくれるので問題ありません。

埋没縫合という、糸が表面に出てこないやり方のときは、浅い方から深く入れるほうの運針が甘くなる傾向があります。するとしっかり皮膚が閉じてくれません。

皮膚の面に平行になるように刺入点の接線ベクトルを意識すれば左右対称の綺麗な縫合になります。さらに、結紮する時は創の方向に糸を引っ張る→結び目を奥に送る→2回目、3回目と結紮するとして糸のたるみを取る必要があります。

引っ張る方向が創方向でない研修医が多く、これも皮膚が閉じない原因になります。

消化管での縫合の時など、強く引っ張らないように結紮

結紮が緩まないようにするには①テンションを常にかけ、緩めない②1回目結紮した後テンションをかけないように2回目結紮する

の2つの方法があります。

消化器縫合(ここでは、手縫いでの縫合にしています)のときは組織を損傷しないように②で行います。そのためのコツは理屈としては余計な力をかけない(不必要なベクトルを生じさせない)ということになります。

1回目の結紮が緩まない程度の最小限のテンション、またはテンションかけずに動かして2回目も結ぶのです。

言葉で言うのは簡単ですがこれは練習が必要です。練習するときに余計な力がかかっていないかをチェックするのがいいと思います。

結紮に関しては、摩擦を利用するのが大事です。摩擦の記事で説明しています。

まとめ

このように物理と数学の知識を使うと非常にイメージするのに役に立ちます。しかも原理がわかるので忘れません。外科医でない方で読んでくださっている方がほとんどだと思いますが、物理と数学がこんな所にも生きてるんだとわかっていただければ幸いです。

この本は外科手技の基本である結紮についてわかりやすく説明されています。

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