摩擦って普段あまり意識していないと思います。寒い時に、手をこすったりしたら暖かくなったりしますね。これは摩擦により摩擦熱が起きて、暖かくなるのです。
タイトルにもある通り、火をつける時など、摩擦は様々な場面で関係してきます。お子さんに、「なんで火ってつくの?」と質問されることもあるのではないでしょうか?これも摩擦を出発点とすると説明しやすいです。
摩擦が役に立つことは日常で数多いです。いくつか見てみましょう。
摩擦とは
摩擦とは2つの物が接している(くっついている)ときに、滑って動くのを妨げる力が働くことをいいます。静止しているときに働く摩擦力を静止摩擦力といいます。静止摩擦力は滑ろうとする力が大きくなると同じだけ大きくなって滑るのを止めますが、ある所で止めきれなくなって動き出します。動き出したあとも一定の摩擦がかかります。これを動摩擦力といいます。
摩擦で火をつける
火をつけるのも摩擦が関係しています。
摩擦が起きると2つのものを構成する原子の振動が激しくなります。これが熱を生じる原因になるのです。温度がどんどん上昇して発火点に達すると、火が生じるのです。
今アウトドアが人気です。ファイヤースターターは簡単に火をつけることができて便利です。
マグネシウムでできた丸い棒(ロッド)をロッドを削る棒(ストライカー)で摩擦熱を生じさせます。この熱がマグネシウムの粉の温度を上昇させ、火花になるのです。木屑などに着火させれば火になります。
なぜマグネシウムを使うのかについては、簡単にいうと少ない熱で火になりやすいからです。詳しくは化学の話になるので下の記事で説明します。
ファイヤースターターは火花が非常に出やすいので、子供に見せやすいですし、アウトドアはもちろん非常時にも使えるのでおすすめです。
車も摩擦を意識すると安全に運転できる。
特に雪道では役に立つかもしれません。雪道は摩擦が少ない(=静止摩擦力が小さい)ので、急に動くと静止摩擦力の限界に簡単に達してしまい、滑ってしまうのです。
さらに同じ雪道でも場所によって摩擦の大きさは異なります。滑って急ブレーキを起こして、摩擦の大きい所に乗ると強い摩擦力がかかり、スリップなどを起こしてしまいます。
今の車はABS(アンチブロック・ブレーキ・システム)が装備されているので、急ブレーキをかけた方がむしろ安全に停止できる場合がありますが、アクセルの時など、加速、減速をゆっくり行う方が安全に運転できます。
タイヤや冬靴が滑らないのも摩擦のおかげ
走り方の他にタイヤの工夫もあります。雪道ではタイヤを冬タイヤに変えます。これはできるだけ摩擦力を維持できるように工夫されたタイヤ、というわけです。
冬の道は雪道の他に凍結した道があります。雪道は雪を踏み固めて摩擦を保つのが効果的です。凍結した道では水の膜ができます。それがタイヤを滑らせてしまうので、それを溝や発泡ゴムが吸収できるようにしているようなのです。
詳しくはタイヤで有名なブリヂストンのサイトで説明されています。
雪国で履く冬靴も似たような工夫がされています。冬靴の裏はスタッドレスタイヤと同じように溝がついた造りになっています。
歩く場合、雪だけの道で滑ることはあまりないです。滑るのは凍った道です。ですから水の膜を吸収するようになっているというわけです。
コロンビアというメーカーのサップランドという冬靴が売れているようです。ゴムは低温になると硬化して摩擦力が落ちてしまうのですが、-20度でも硬化しないように材質に工夫がされているそうです。
また、凸部にさらに細かい突起がついているので、氷上での安定したグリップ力を発揮するのです。
外科の糸結びも摩擦が関係している
糸結びも動摩擦の式を使うとより理解しやすいです。両手結びで、テンションをかけてくるっと結ぶとき、真横から見ると円運動になっています。
この円の半径をできるだけ小さくするのが大事です。すると指と糸がしっかり接するので、動摩擦力が働きます。半径を小さくできるほどμNのNが大きくなるので緩みにくくなるのです(N:指の圧、μ:動摩擦係数)。
器械縫合でロック(結んだ結び目が緩まないように固定することです)の時は、静止摩擦力がかかるようにします。糸を上から押さえてNを大きくしたり、緩む力を弱めたり(手で押さえてもらうとか)すると良いでしょう。
糸結び、縫合に関しては下の記事でも説明しています。
まとめ
摩擦で火をつけることができる
摩擦を意識して安全運転
タイヤや冬靴が滑らないのも摩擦のおかげ
外科の糸結びも摩擦を利用している
他にもあらゆる場面で摩擦は関係しているので、気になったら調べてみましょう。
コメント