肺の良性疾患の一つに気胸があります。気胸とは、肺に穴が空いてしぼんでしまう病気です。健康な若い人がかかる自然気胸や、喫煙者に多い続発性気胸などがあります。気胸の人は飛行機に乗ったり、標高の高い所にいくと症状が悪化してしまうと言われています。これも物理の考えで説明することができます。
高校物理、高校化学でボイルシャルルの法則というのを習いました。
P1V1/T1=P2V2/T2
P1,P2は気圧、V1,V2は気体の体積、T1,T2は気体の温度です。高校で学んだ方はご存知だと思いますが、物理学、化学どちらの考え方でも同じ式を導くことができます。
飛行機は高度7000-10000m位の高度を飛行しますが、与圧をかけて標高1800-2000m位の気圧に保たれるように調節されています。この時、地上の8割くらいの気圧です。
単純に計算すると、気体の体積は1.25倍になりそうです。
ただし肺は、胸腔という胸の中の空間の中にすっぽり入っています。胸腔の体積はそれほど変わらないので、これを一定として計算します。胸腔内は横隔膜の動きによって値が変わるので難しいですが、平均しての計算とします。 V1は1気圧のとき、つまり地上のときの肺の体積を除いた胸腔の体積、 V2は飛行機内での体積とします。高山に持っていったポテトチップスの袋が膨らむのは、袋の外の空気の密度が下がるからです。今回は肺の空気が、外の空気になるわけです。
PV1=0.8PV2
V2=1.25
つまり、肺でない体積が1.25倍になるので、より肺の体積はしぼむ、気胸が進んで危険というわけです。上の式は温度一定としているので、ボイルの法則でも良いです。
このように、気胸が高いところで危険な理由がボイル・シャルルの法則で説明できましたね。
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