病院での手技、中心静脈カテーテル留置と胸腔ドレーン留置。違う手技ですが、胸腔を図形に見立てれば挿入のイメージがとても湧きやすいです。ここでも数学が生きてきます。
中心静脈カテーテルとは?
病院で中心静脈カテーテル留置(医療関係者ではCVということが多いです)という処置があります。心臓に近い太い静脈に管の先端を置くことで、細い血管だとダメージを受けてしまうような薬剤、中心静脈栄養を投与できたりできます。
胸腔ドレーンとは?
胸腔ドレーンという処置もあります。これは胸の中の空間(=胸腔)に管を入れる処置です。肺に穴が開く気胸という疾患や、色々な原因で胸腔に水が溜まった時に、脱気や水を抜くことができます。
さてこのCVとドレーンという2つの処置、全然違うことをしていますが、この2つは反対のアプローチをすると覚えると理解しやすいです。
ただしCVは鎖骨下アプローチの場合のみになります。
イメージの仕方
胸腔の壁(胸壁)は曲線を描いています。肋骨が12対の背骨(胸椎)から分岐して胸壁を支えています。鉄筋コンクリートの鉄筋のようなものです。下の図の楕円が胸壁、小さい楕円が肋骨のイメージ図です。
胸壁の曲線に接線を引いてみましょう。
接線に垂直だと胸腔の中に入る、平行だと胸腔の中には決して入らない、というのがイメージできると思います。
この接線に垂直に近い角度で処置をするのが胸腔ドレーン、平行に近い角度で処置をするのがCVなのです。近いと言ったのは完全に垂直、平行ではないからです。超音波装置(エコー)を使ったCV挿入では45度の角度で刺したりします。
このイメージが、安全に確実に処置を行うコツになります。CVでは合併症として気胸があります。接線に垂直に近い角度になっていくと胸腔内に入る可能性が高くなり、気胸の危険が上がるわけです。胸腔ドレーンでは逆に、平行に近い角度だといつまでも胸腔内に入りません。垂直を意識する必要があるわけです。
ちなみに、手技の本では創を肋間からずらしてドレーンを挿入すると書いてあることが多いです。肋間からずらして挿入すると、ドレーン横の穴からの空気の吸い込みを防止できる効果は確かにあります。
しかし、一番大事なことは安全確実にドレーンを挿入することです。創をずらした状態では、垂直にドレーンを挿入することが困難であり、どうしても角度が斜めになってしまいます。さらに、皮下脂肪が厚い人、外傷、膿胸で挿入部位が限定される人に対して創をずらしていると対応できないことが多いです。
よって、まずは垂直に近いベクトルでドレーンを確実に挿入できるようにし、余裕が出てきたら難易度の低い症例で創を肋間からずらすようにすると良いでしょう。
まとめ
・CVでは接線にどちらかというと平行に針を進める
・胸腔ドレーンでは接線にどちらかというと垂直に管を入れる
今回のイメージを持てば、合併症を防ぎ、成功する確率を上げてくれることでしょう。数学的思考が大事なわけですね。
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