塩素が肌荒れの原因かも② 化学を役立てる③

健康

前回塩素が肌荒れの原因になるというお話をしました。

水道水による肌荒れに関して、論文を調べてみました。するとなかなか面白いことがわかりました。

・外国では硬水による影響が塩素より強い。

・硬水では、塩素除去はあまり効果がない。

水の硬度がアトピーに関係しているみたい

Perkin MR, Craven J, Logan K, Strachan D, Marrs T, Radulovic S, Campbell LE, MacCallum SF, McLean WH, Lack G, Flohr C; Enquiring About Tolerance Study Team. association between domestic water hardness,chlorine,and atopic dermatitis risk in early life a A population-based cross-sectional studyJ Allergy Clin Immunol. 2016 Aug;138(2):509-16.

イギリス全土で行われた横断的研究というデザインの論文です。

上の英語文は論文の住所のようなものです。google scholarやpubmedという論文検索サイトで調べることができます。

CaCO3と塩素濃度、子供のアトピーの関係について調べた初の論文のようです。

内容をおおざっぱにいうと、生後3ヶ月の子供では水道水中の炭酸カルシウム(CaCO3)濃度が高いのと湿疹になりやすいということでした。

炭酸カルシウムを除去するとアトピー湿疹になる割合が減ったようなのです。

またフィラグリン遺伝子(FLG)変異があるかないかでも比べていました。アトピーに関係する遺伝子のようです。FLG変異があると湿疹がひどくなるとのことでした。

炭酸カルシウム濃度が上がるとFLG変異あるなしにかかわらず皮膚の水分が失われてしまい、肌に良くないようです。

炭酸カルシウムは水の硬さを決めるものです。炭酸カルシウム濃度が高いと硬水、低いと軟水になります。

この論文で意外だったのが、塩素の濃度は湿疹と明らかな関連が見られないという結果になったことです。

硬水はボディソープやシャンプーの成分が肌に残ってしまう

Danby SG, Brown K, Wigley AM, Chittock J, Pyae PK, Flohr C, Cork MJ. The effect of water hardness on surfactant deposition after washing and subsequent skin irritation in atopic dermatitis patients and healthy control subjects. J Invest Dermatol. 2018 Jan;138(1):68-77. 

次の論文もイギリスの論文です。硬水がアトピー湿疹の原因であることを踏まえ、その原因を調べた研究のようです。

結論としては、硬水で肌を洗うとラウリル硫酸ナトリウムが皮膚に残ってしまい、これが皮膚に刺激になってアトピーの悪化につながるということでした。

ラウリル硫酸ナトリウムとは、界面活性剤、つまりシャンプーやボディソープの成分のことです。

カルシウムの濃度高いと界面活性剤が水に溶けなくなり、洗った後も皮膚に残ってしまうとのことでした。

炭酸カルシウムの濃度を 25mg/l以下(これは軟水の濃度になります)にすると沈着が劇的に減り、皮膚のバリアの損傷も減るということでした。

この論文でも、塩素濃度とアトピーの関連はなかったようです。

日本ではどうか?

さて、今までの論文はイギリスのものでした。イギリスの水道水は日本より遥かに硬度が高いです。

日本の水道水はほとんどが軟水なので、イギリスと同じ結論にはならないと思います。

硬度が高いと炭酸カルシウムの影響が、低いと塩素の影響がより強く出てくるのかもしれません。

ちなみに、塩素濃度は日本よりむしろイギリスの方が高いみたいです。

日本では古いですがこのような論文がありました。

Seki T, Morimatsu S, Nagahori H, Morohashi M. Free residual chlorine in bathing water reduces the water‐holding capacity of the stratum corneum in atopic skin. J Dermatol. 2003 Mar;30(3):196-202. 

2003年の論文です。大阪の6歳から12歳までの子供で調査した研究です。

この論文では水道水の塩素濃度が高い環境だとアトピーは悪化したようです。やはりイギリスとは違うようですね。

まとめ

・外国では硬水による影響が塩素より強い。

・硬水はボディソープやシャンプーの成分が肌に残ってしまい、アトピーを悪化させる。

・硬水では、塩素除去はあまり効果がない。硬水を軟水にする対策が最も効果的。

これから硬水の地域(特に外国)に住む方は注意して対策されるといいですね。

硬水の地域では軟水の地域の肌荒れ対策が通用しないのかもしれません。これは実例がないのでわかりませんが。。

ビタミンC製剤や、キュレルなどの肌に優しいボディソープも効果が薄いのかもしれませんね。

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